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成人の日を迎えた皆さん、おめでとう。
元日から大災害に見舞われ、波乱の年明けとなった。それだけに皆さんの、前途に幸多かれと願わずにはいられない。
令和4年に民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた。総務省によれば、1月1日時点で平成17年生まれの新成人(18歳)は106万人となった。前年より6万人少なく、過去最少である。
大人の仲間入りをした皆さんには、困難な状況にも負けない力強い一歩をのぞみたい。同時に、これから一緒に社会を担っていく自覚を求めたい。
飲酒や喫煙は20歳からだが、18歳になると、国政選挙や地方選挙に投票できるようになる。親の同意がなくても携帯電話などを契約したり、ローンを組んだりできる。
その分、大人としての責任が重くなるということだ。
昭和23年制定の祝日法で、成人の日は「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日とされた。
成人となる節目を祝う儀式は古くからある。男子は奈良時代以降、数え12~16歳になると服装や髪形を大人のものに改め、冠をつける「元服(げんぷく)」があった。女子も同じ年代で髪を結い上げ、裳(も)という衣服をまとう「裳着(もぎ)」があった。
いずれも時代とともに様式が変わっていくが、その意義は現代に通じている。
木戸孝允や伊藤博文ら明治の元勲を育てた吉田松陰は、元服するいとこに7つの教え(士規七則)を記して贈った。そのひとつを紹介したい。
「人は古今に通ぜず、聖賢を師とせざれば則(すなわ)ち鄙夫(ひふ)のみ。読書尚友(しょうゆう)は君子の事なり」
歴史を知らず、優れた賢人に学ばなければ心の貧しい人間になる。書物を読んで昔の賢人を友にするのが立派な人間だ―という意味である。
新成人の皆さんは、変化の激しい時代を生きている。インターネット上にはさまざまな情報があふれ、真偽が定かでないものも少なくない。
これから道に迷うこともあるだろう。そんなときは良書をひもとき、先人たちの教えに触れてほしい。
ヒントがきっと、あるはずだから。
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2024年1月8日付産経新聞【主張】を転載しています